震災レポート「2011年 東日本大震災の記録」

経験を今後に

2011年東日本大震災の記録

 アルプス電気では、2011年の東日本大震災の経験を風化させないこと、そしてその経験を生かし次の行動につなげ、今後の企業運営や防災対策の継続的な改善に役立たせるために、「2011年 東日本大震災の記録」を制作しました。
 本レポートは、3月11日、地震発生直後から設置された災害対策本部の方針や動きをはじめ、拠点の状況や活動、および全体総括や今後に備えた課題等をまとめて収録しています。加えて、実際現地で被災した社員からの体験レポートも収録しています。

社員による体験レポート

 社員からの体験レポートを収録した目的は、企業の有事に対する活動の記録とは別に、一個人としてこの震災を直接的、間接的に経験し、一人ひとりが感じたことや気づいたことを後世に残すことでした。被災し、その土地で生活しながら、会社や家の復旧に携わった社員の実体験や思い、考えを生の声で記録することが大切だとと考えたからです。
 レポートの収集にあたり、テーマを3つ設定しました。

  1. 地震発生直後から翌日までの体験や思ったこと3月11日地震発生時、どこでどのような状況で遭遇し、まず自分が取った行動、考え、思いはどんなものであったか。
  2. 被災の全容が分かり、元の生活を取り戻すための体験や思ったこと地震が収まった後、自分の生活を取り戻すため、特に大変だったこと、特にどんな思いを持って、どのような行動を行ったのか。(または、行っているのか)
  3. 今回の体験を通して、今後に残しておきたい行動や思い今、自分の行動を振り返ってみて、できて良かったこと、思っていたのにできなかったこと、できればこうするべきであると思うこと(個人、会社、地域など範囲は問わない)

 

 レポートは、2011年5月25日から6月24日まで、全グループ社員約8,000名を対象に募集し、総数609件のレポートが集まりました。

体験レポートから

 約600件の「体験レポート」には、いくつかの共通点が見受けられました。その多くは、災害に対する備えや普段からの心がけ等が多く含まれました。
 共通して寄せられたアイデアや考えは、以下のとおりです。

【個人での備え】

  1. 備蓄品
    1. 水、食料(米、カップ麺、インスタント食品、缶詰、子供の不安を除くためのお菓子)
      ※少なくとも3日分の食料、飲料
    2. ローソク、懐中電灯(特にLEDが良い)、乾電池、カセット式ガスコンロとガスボンベ、燃料(ガソリン、灯油、炭)、ライター、マッチ
    3. 水のポリタンク、給油缶
    4. 現金(カード・電子マネーは使えないため)
    5. ラップ、紙コップ、紙皿、ビニール袋
    6. スニーカー
    7. ティッシュ、ウェットティッシュ、除菌剤
    8. 簡易トイレ
    9. 下着、衣類

  2. 役に立った物
    1. 手巻き充電式ラジオ、電池式ラジオ、ワンセグ放送(携帯電話など)、車のTV・ナビ・ラジオ
    2. キャンプ用品(ランタン等)
    3. 石油・灯油ストーブ
    4. 黒電話
    5. 発電機、ソーラーパネル付庭灯/玄関のセンサ付きLEDランプ
    6. USB充電プラグ・コード、携帯電話の電池式充電器、PCの蓄電池からの充電
    7. プロパンガス
    8. カイロ、湯たんぽ
    9. 自転車
    10. 風呂水の溜め置き、川の水、井戸水、田んぼの用水路、雪・雨
    11. 冷凍庫、クーラーボックス
    12. 炭酸水(洗い物に役立つ)

  3. その他
    1. 地震用家財保険

 

【行動・活動】
  1. 避難・安否確認
    1. 家族との連絡方法、避難場所等を決めておく
    2. 災害伝言ダイヤルの利用方法を確認しておく
    3. 緊急持ち出し品リストを準備しておく
    4. 緊急持ち出し品を一箇所にまとめておく
    5. 災害時の帰宅ルートを確認しておく
    6. 避難場所、公共施設の確認をしておく
    7. 被災帰宅時は自宅周辺の人とまとまって行動する
    8. 情報が錯綜するので、自分でしっかり判断し、行動する
    9. 海外赴任者は、日本の報道をキャッチ出来る環境を整えておく

  2. 家の中での備え
    1. 家具類の転倒防止対策
    2. 廊下、玄関周辺など避難通路にある荷物の整理
    3. 複数のエネルギー源を持つ

  3. 家の周り、会社の周りでの備え
    1. 最寄りの官庁所在地の確認
      (復旧拠点となり情報等を得られる。また、仮設トイレ・給水車などが早期に設置される)
    2. 市役所には情報や物資が集まってくる(人の少ない避難所には物資が集まらない)
    3. 普段からの近所付き合いをしておく。お互い助け合いの気持ちが大切
    4. 物品の購入には、大型スーパーに比べ、小さな商店の方が可能な時がある
    5. 地域のボランティアに参加する

  4. その他
    1. Twitterによる情報収集は有効

 

 体験レポートから分かったことは、少しでも備えをしている人と、全くしていない人とでは、歴然の差があったということです。こうした社員の経験が、後世の役に立つことを願ってやみません。

「2011年 東日本大震災の記録」の概要

体裁 A4バインダー
ページ数 474ページ
制作数 110部
発行日 2012年1月25日
発行部門 CSR部
配布先 グループ会社を含む国内全拠点75箇所
海外拠点へはPDFデータを送付
収録内容 1)「東日本大震災の記録」発刊にあたって
2)東日本大震災 統括と今後の危機管理強化対策
3)東日本大震災 社員体験レポート(レポート掲載数609件)
取り扱い 社外秘資料
復旧スピードの速さが、災害に強い企業
災害に強い企業を目指して

 私たちは、東日本大震災の経験を通して、災害に強い企業とは何かをもう一度考えました。それは、スピードがひとつの条件であると結論づけました。災害が起こり被災したとしても、事業をより短期間で再開すること。これが、災害に強い企業には欠かせないと考えています。世界を見渡しても、欧州の火山爆発や2011年のタイの洪水など、災害がないと保証のできる地域はないのかもしれません。
 この東日本大震災では、一企業として、方針と対策に優先順位をつけ、それに則り復旧活動を進めました。その結果、宮城県の生産拠点は稼働日換算で6日後の3月22日より、福島県の生産拠点では同10日後の3月28日より、生産を再開させています。

経験を生かす

 災害に強い企業とは、復旧スピードの速い企業・・・そうしたスピードを生み出すためには、これまでの経験が生きています。アルプス電気は、これまで、度重なる自然災害と対峙してきました。この災害の経験から、普段からどのような備えが必要なのかを常に考え、我々の知恵としてきました。

<ここ10年間の災害による被災状況>

発生年 地震名と震度 被災状況
2003 三陸南地震
(M7.1 最大震度6弱)
国内8拠点で中~小規模の被災
2004 新潟県中越地震
(M6.8 最大震度7)
長岡工場(新潟県長岡市)が被災。
10日間で復旧
2004 新潟・福島豪雨 被害なし
2005 新潟県中越沖地震
(M6.8 最大震度6強)
長岡工場(新潟県長岡市)が被災
生産は1日で復旧
2008 秋田・宮城内陸地震
(M7.2 最大震度6強)
岩手沿岸北部地震
(M6.8 最大震度6強)
被害なし
2011 東北地方太平洋沖地震
(M9.0 最大震度7)
宮城県で5拠点、福島県で2拠点が被災。
宮城県下では、約1週間、
福島県下では、約2週間で生産を再開

生産設備

 例えば、生産設備に対する対策。生産設備は、揺れや振動が与えられると、元の場所から機械自体が動く位置ずれを起こします。自動機は、一度位置ずれを起こすと、元の位置へ戻すだけではなく、正常に稼働するかどうかの緻密な点検や調整を再度行わなくてはならないのです。地震発生の際、位置ずれを最小限に抑えるため、機械をボルト等で床に固定することが最善の対策とは必ずしも言えません。今回の震災のように大きく揺れ、重さが数トンにもなるような機械が動いてしまう場合は、床と機械をボルト等で固定すると、建屋の床自体が破損してしまい、床の修繕から行わなければならないからです。そこで、当社では重さや形状などそれぞれの機械の特徴ごとに固定方法を変えています。例えば、非常に強い揺れであれば、揺れに任せた方が機械自体や建屋への破損が少い設備は、あえて床へ固定しません。また、オフィスにおいても、高い位置にある棚は扉付を、サンプル等を収納するラックには、飛び出しを抑える紐(鎖)を設置しています。日常業務の効率を妨げず、かつ、いざという時には被害を最小限にする工夫・・・その積み重ねがアルプス電気の知恵となり、復旧スピードを早くするために役立っています。

災害以外でも

 経験を記録として残し、後世に生かしていく・・・これは、アルプス電気の企業文化のひとつかもしれません。「記録として残し、経験を後世につなぐ」取り組みとして、災害だけでなく事業や拠点のあゆみなどの企業活動そのものも私たちは記録として残してきました。
こうした取り組みは、事業に携わった社員や拠点で活躍した社員が中心となり、執筆や資料の提供・収集・編纂をしています。
そして、何十年も後に同じような経験をする後輩たちの仕事の参考や心の支えとしてもらうために、また、当社の歴史や文化を深く理解してもらうために、今も記録を残し続けています。
現在では、全25冊の社史や事業史、工場史、製品・技術史等の記念誌や記録誌があります。その中からいくつかをご紹介します。

<主な記念誌・記録誌>

誌名 発行年 概要
アルプス‘74・不況の記録 1975 オイルショックによる希望退職などの記録
アルプスのあゆみ(社史) 1978~ 創立30周年を機に制作。
以降、当年度を加え毎年発行
エアバリコン栄光の35年
1950~1984
1984 1984年に生産を終了した、
創業第2号製品であるエアバリコン生産のあゆみ
アルプスマレーシア10年史
1989~1999
1999 東南アジアへの生産拠点展開のあゆみのまとめ
2009年には20周年史を自主制作で発行
福華電子のあゆみ
1960~2000
2001 合弁解消を機に記録としてまとめ
アルプス中国展開10年誌
1993~2004
2004 1984年、上海へのプラント輸出に始まった、
中国への拠点展開へのまとめ
桜ノ目工場MR-HDの足跡
桜ノ目工場9年史1996-2005
2005 拠点閉鎖に伴う、
社員による自主制作による工場のあゆみのまとめ
磁気ヘッド事業40年のあゆみ
1967-2008
2008 民生用磁気ヘッドから始まり、
2008年に生産を終了した磁気ヘッド事業のまとめ
アルプス米国展開30年史
1978~2008
2008 現地法人および関連子会社のあゆみのまとめ
災害以外でも

 より強い企業となるために、有事の経験を生かしていくこともさることながら、平時にはBCM(事業継続マネジメント:Business Continuity Management)も進めてきました。BCMはBCP(事業継続計画:Business Coutinuity Plan)とBIA(事業中断損害の評価:Business Impact Analysis)からなり、BCPは事業継続のための予防(防護)とそして有事の復旧プランを、BIAは事業が中断した時のリスク評価を含みます。平時に、有時における方針や考え方をグローバルで整えることで、日本国内だけでなく海外でも非常時に迅速な対応ができると考えています。そして、アルプス電気のBCPの考え方は、「有事に際し、顧客への供給責任を完遂させるため、グループの総力を結集させ、対策を迅速に実行していく」と定めています。今回の東日本大震災からの早期復旧はこの考え方に基づいて社員全員が着実に実行した結果といえるでしょう。
私たちは、有事のたびにBCMを見直しています。より迅速な、事業の復旧を実施するために、必要な改善を加え続けています。

<BCPのあゆみ>


ビジネスリスク BCPの取り組み
1995 阪神淡路大震災
  • 地震防災対策の強化
  • 海外も含めた危機管理体制を整備
2003 SARS発生
三陸南地震
  • 自然災害や事故以外のリスクも含めた危機管理強化に着手
  • 災害リスクアセスメントを実施
  • 危機管理委員会の設置
2004 新潟県中越地震
  • リスクマネジメント・コンプライアンス委員会の設置
    (危機管理委員会とコンプライアンス委員会を統合)
  • BCPの取り組み始まる
  • BIAを国内・海外製造拠点で実施(2006年まで)
2005 新潟県中越沖地震
  • 危機管理マニュアル(第1版)発行
2006
  • CSR委員会の設置
    (リスクマネジメント・コンプライアンス委員会の機能を含む)
  • 危機管理マニュアル(第2版)発行
  • BCMの観点での取り組みを開始
  • 工場単位に加え、事業単位ごとにBCP策定に着手
2008 秋田・宮城内陸地震
新型インフルエンザ
  • スコアリングロジックの設計
    (BIAに必要となるリスクが与えるダメージの
    定量算出と対策の優先順位付けを行う手法)
  • 危機管理マニュアルをBCPの観点で、
    見直し、不足部分の追加改定作業中