静電容量センシング技術

触れるだけで、使う人の気持ちを機械に伝えるフィルム。
それは魔法ではなく、テクノロジーです。

「もっと快適に、デジタル機器を使いこなしたい」
こんなニーズを解決するのがアルプス電気の技術です。

「人の心地よさ」だから人のことから始めます。

私たち人間は、電気的には「導体」…すなわち電気を通す物質です。これは、理科の時間に教わりました。では、私たちは身体から電気を発生(※1)させ、体内では電流が流れていることは知っていましたか?
私たち人間が電気的物体であることが、モバイル社会でひとつの技術へとつながっていきます。

※1)心臓から電気が発生

心臓から発生する電気を記録したのが「心電図」。1903年、オランダの学者アイントーフェンが、機械を使って心臓の電気を計測しました。これが、現在健康診断などで行われる、心電図の始まりです。アイントーフェンは「心電図の父」と呼ばれ、ノーベル賞を受賞しています。

薄く、軽くしかも高性能が課題

私たちがパソコンを使用する時、情報をインプットする「入力機器」と、情報をアウトプットする「出力機器」は欠かせないものです。入力機器の代表例としては、キーボード、各種スイッチ、マウスなどがあります。一方。出力機器は、モニタがその代表です。大きなデスクトップ型PCからノートPCへ市場ニーズが変化してきた時、大きなスペースを必要とするこの入力機器・出力機器をどうやって、持ち運び可能な状態で搭載するかが課題となりました

なかでも、マウス操作を担うポインティングデバイスは、ノートPCにとって大きな課題。画面上のカーソルやアイコン操作など、感覚的なパソコン操作に必須のものだけに、ユーザーの使いやすさが大きなポイントでした。このニーズに応えて開発されたのが、「タッチパッド」…「グライドポイント™(アルプス電気製品名)」です。

「グライドポイント™」は、フィルム上での指の動きと、画面上のカーソルの動きがシンクロするポインティングデバイス。指先だけで自由にカーソルを操作でき、感覚的な操作性が好評を得ています。また、シート状の機器のため、薄型・小型・軽量化の面でも優れており、今ではノートPCに不可欠なポインティングデバイスとなっています。

人間の指から流れ出る電気エネルギー

「グライドポイント™」のコアとなるのは、静電容量センシング技術です。静電容量とは、導体がどれくらい電気エネルギーを蓄えることができるかを表すもの(※2)。電気エネルギーを蓄えた導体…グライドポイント™に、誘電性(電子を引き付ける性質)を持つ人間の指が近接すると、電気エネルギーが人間に流れ込み、グライドポイント™内の静電容量が変化します。この静電容量の変化から、指の位置・動作を検出していくのが静電容量センシング技術です。

人間の指から流れ出る電気エネルギー

「グライドポイント™」の仕組みをご紹介しましょう。 まずは、指の操作を感知するセンサ機能。このセンサ部は格子状のX電極(16本)とY電極(12本)からなり、電極間に電気エネルギーを蓄えます。何も操作していない状態では、2つの電極は安定した電界を構成しています。しかし、アースの役割を持つ人間の指が近接すると、電界は変化。指が触れた部分の静電容量値が減少します。この現象は、人体の持っている導電性により発生する(※3)のです。X電極、Y電極はそれぞれ、128段階の静電容量の変化を検出可能。強くプッシュしなくても、指が触れていることを感知しています。 次は指の動きを検出する座標検出機能です。座標検出部では指の接近を検出し、X電極とY電極のスキャニングを行います。スキャニングは1秒間に100回実施し、素早い指の動作を検出。なめらかな操作性を実現しています。

静電容量方式によるポインティングデバイスは、操作面に負担をかけることなく、触れるだけで操作することが可能。そのため、操作部の品質劣化がほとんどなく、高い信頼性を保持できます。また、アルプス電気では独自の技術力で、フィルム上に静電容量センサの積層印刷を可能にし、さらなる薄型化も実現しています。

また、アルプス電気の静電容量方式を用いたポインティングデバイスは、フィルム状という特性で、様々なサイズや型状に加工できます。搭載する機器のサイズやカタチには制限がありません。現在この特性を活かし、ノートPCの入力機器というフィールドを飛び出して、異なる機器への利用が考えられています。 例えば、携帯電話。中国向けの「手書き入力可能携帯電話」や、携帯電話でのホームページ閲覧をスムーズにするキーパーツなど、すでに実現しているケースもあります。 それ以外にも、小型・薄型の携帯機器、携帯用小型AVプレーヤやデジタル家電用多機能リモコンなど、さらに幅広い利用範囲のプランを計画中です。

※2)静電容量と騎士(ナイト)

静電容量の国際単位は「F(ファラド)」。これは英国の物理学者ファラデーに因んだ命名です。13歳で製本屋の見習いとなったファラデーは、22歳で王立研究所の化学者の助手となります。その後、電磁気学で電気分解の法則や電磁誘導の法則の発見など、目覚しい活躍を遂げます。しかし、ナイトの称号を始めとするすべての名誉を辞退し、「最後まで、ただのマイケル・ファラデーでいたい」と、生涯一研究者であること貫きました。

※3)あなたも私も引き合っている?

物体は動くことで、物体同士の摩擦、時には空気との摩擦などで、物体内の電子の電気的極性が「+/-」のいずれかに片よってしまいます。この極性の片よりは、物質によって異なります。私たち人間は「+」に片よりがちとされ、そのため他の物体の「-」電子と引き合います。ちなみに私たちの体内を流れる生体電流は、200μA(マイクロアンペア)前後。知覚神経では 感じ取れないほど弱い電流です。

「人の心地よさ」を考えるからテクノロジーは進化します

「ヒューマン・マシン・インターフェース」は、私たちアルプス電気の技術開発テーマのひとつ。静電容量コントロール技術を用いたポインティングデバイスは、その実現例といえるでしょう。人間の「誘電体」という特性に着目し、その特性と先進技術を結びつける。そこから新たな入力機器が開発されました。
技術からのアイデアと、「使う人」からの発想。
この両方向からの取り組みが、新しい入力機器を生み出していきます。

次は、私たち人間のどんな能力・特性を活かした製品が表れるのでしょう。 モバイル社会に、驚きの電流が流れるような新製品をアルプス電気から。「ヒューマン・マシン・インターフェース」を目指す、アルプス電気の夢です。