スイッチ

デジタル製品の中で活躍するアルプス電気の「スイッチ」

社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)が発表した、2006年度(2006年4月~2007年3月)「電子部品グローバル出荷統計」によると、日系部品メーカーが世界へ向けて出荷した電子部品の総出荷額は4兆7344億円でした。
電子部品の内訳はコンデンサーやコイルなどの受動部品、スイッチやコネクタなどの接続部品、スピーカーやモーターなど変換部品、そしてチューナなどその他部品に大きく分類されます。接続部品のひとつである「スイッチ」の出荷額は4393億円で、全体の約9%を占めています。

スイッチは操作部として、人と電気・電子機器とのコミュニケーションを支える身近な存在です。電気・電子機器を始動させるために電源スイッチを押し、ユーザーは機械に対して「スタート」指示を伝えます。また、スイッチを押した指先の感触によって、確かに「押して指示を出したこと」を認識できるのです。

アルプス電気は、1948年にラジオのバンド切り替えのためロータリスイッチの生産以来、さまざまなスイッチを開発・生産・販売してきました。現在では、年間約60億個のスイッチを生産しています(※1)
ブラウン管テレビでアナログ放送を楽しんだ時代から、携帯電話で地上デジタル放送(ワンセグ放送)を楽しむ時代へと生活が変遷しているように、その時代ごとに現れる電気製品の機能にふさわしい、人々のニーズに合った「部品」として、スイッチも変遷しています(※2)

今回はスイッチの役割や種類のご紹介とともに、時代のニーズとスイッチの関係と、そこに生きるアルプス電気の技術を紹介します。

アルプス電気が初めて開発したロータリスイッチ(左)と最新のロータリスイッチ(右・矢印)

アルプス電気が初めて開発したロータリスイッチ(左)と
最新のロータリスイッチ(右・矢印)

※1)赤箱のアルプス

戦後間もないころ、一般の人がラジオを自分で組み立てていた時代に、初めて民生用として製造された「ロータリスイッチ」・・・として、アルプス電気の「S型ロータリスイッチ」は国立科学博物館<産業技術史資料情報センター>に登録されています。当時はそのパッケージから、「赤箱のアルプス」と親しまれました。ちなみに「日本のテレビ放送が始まった時に誕生したスイッチチューナとして、アルプス電気の「テレビ用6チャンネルロータリチューナ」も、同じく登録されています。

※2)茶色でなくても「ブラウン」

ブラウン管とは、陰極線管(CRT、Cathode Ray Tube)のこと。ドイツのカール・フェルディナント・ブラウンが1897年に発明した表示器です。ブラウンの発明以来、110年あまり。テレビ放送とともに長く親しまれてきたブラウン管ですが、現在は日本国内でCRTディスプレイとブラウン管テレビともに、生産はごくわずか。液晶やプラズマなど、新たな表示器が多数を占めるようになっています。世界的にも、ブラウン管の需要は縮小しています。ブラウンはのちに「ノーベル物理学賞」を受賞します。

日常生活に欠かすことのできないスイッチの機能と役割
スイッチは、人と機械の「インターフェース」

朝、目覚まし時計のベルを止めるためにスイッチを押し、起床して部屋の電気を付けるためにもスイッチを押し、そして、朝のニュースを見ようとテレビの電源スイッチを押す。ほかにも電話・携帯電話、ファックス、パソコン、自動車、洗濯機や電子レンジの操作パネルやゲーム機のコントローラーと、生活のあらゆるところにスイッチは存在します。
現代に生きる私たちは、さまざまな電子・電気機器に囲まれて生活をしています。そうした機器と私たちをつなぐのがスイッチです。スイッチは電源のON/OFF・音量の調整など、ユーザーの指示を機器に伝え、同時にユーザーへはクリック感やノブの移動で、操作状況を伝えるインターフェースの役割を担います。(※3)

アルプス電気が開発・生産するスイッチは、大きく分けて「電気回路切換用」と、「検出機能用」の2種類があります。
「電気回路切換用」とは、テレビの電源スイッチのように100ボルト、200ボルトといったある程度大きな電流を切り換えるAC(交流)電源切換用と、携帯電話のテンキー部分や音楽プレーヤのボリューム切り替えなど、DC(直流)微少電流回路切換用とマイコン入力用があります。
後者の「検出機能用」は、物の位置や有無を機器内部で検出するためのスイッチです。

アルプス電気のスイッチには、用途や形状、操作方法の違いで多くの種類があります。

【アルプス電気のスイッチの種類】

「アルプス電気のスイッチの種類」拡大画像

閉じる

【デジタルカメラとそこに使われる代表的なスイッチ】

「デジタルカメラとそこに使われる代表的なスイッチ」拡大画像

閉じる

※実際の市販されているデジタルカメラのすべてに上図のスイッチ類が使われているとは限りません。紹介したスイッチの用途もこの限りではありません。

※3)仮想空間のスイッチ

スイッチは、指で触れるものだけとは限りません。パソコン画面には、数多くの「スイッチ」が表示されます。WindowsやMacなどOSに関係なく、私たちの指示をコンピュータに伝えるのは数々の「ボタン(スイッチ)」です。その多くは実際のスイッチのように立体的に表され、カーソルでボタンを押した時には凹んだ様子に変化し、本当のスイッチのように「カチリ」と音が鳴る場合もあります。機械とのインターフェースとして、「スイッチ」の感触や音がいかに私たちにとって馴染み深い存在であるかが分かります。

進化するスイッチ

現在、アルプス電気は約250種類(シリーズ)のスイッチを生産・販売し、年に平均で25種類の新しいスイッチを生み出しています。スイッチは、その用途や使用される場所に合わせ、進化し続けているのです。

例えば、デジタル機器の代表である携帯電話。機器自体の薄型・小型化は当然で、高画素カメラ機能はもちろんのこと、地上デジタル放送(ワンセグ放送)の視聴やフルブラウザ機能など、さらに次々と新しい機能が付加されています。携帯電話向けスイッチのもっとも難しいポイントは、スペースが小さいことです。
携帯電話のテンキー部分には、12個の番号ボタンがあります。12個の番号ボタンを設置するということは、12個のスイッチが必要になります。薄くて小さな携帯電話では、省スペースでの設置が求められます。こうしたニーズから開発されたのが「コンタクトシート™」です。コンタクトシート™は、粘着シートにいくつものドーム状の金属板ばねを並べたもので、回路基板に貼り付けて使用することでスイッチとして機能します。通常であれば製品の回路基板に、ボタン1カ所につき1個のスイッチを配置しますが、このコンタクトシート™を使用することで、1個ずつスイッチを並べる手間を省くとともに、携帯電話の薄型化にも貢献しています。

コンタクトシート™

コンタクトシート™

また、携帯電話や携帯音楽再生プレーヤのデータ保存機能も進化しており、電話帳や収録音楽など「リスト」から、特定の番号や曲目を選択・決定を行うことも多くなっています。この場合スイッチにはリストを上下させること、そして選択・決定をすることという2つの機能が求められます。ユーザーにとって、こうした複数の機能を別々のボタンで操作したり、何度もボタンを押したりするより、「指一本」で行うことが「便利」「快適さ」につながります。
アルプス電気では、こうした複数の機能の組み合わせた複合型デバイスを数多く生み出しています。SRBEシリーズは、複合型デバイスとして、エンコーダとプッシュスイッチの組み合わせでできており、エンコーダを回すことで選択画面の上下、プッシュスイッチで決定の機能を担います。
画面のスクロールと選択・決定を指1本で行うことは、携帯電話などセット製品に組み込まれている機能全体から見るとささやかなことかもしれません。こうした“ささやか”なところからも、ユーザーが簡単に取り扱え、人にとって電気・電子機器がやさしいものとなるよう、アルプス電気は部品の開発に取り組んでいます。

SRBEシリーズ

SRBEシリーズ

携帯電話など小型デジタル機器の部品にとって、「軽・薄・短・小」は必須要素です。それに「付加価値」として、セット機器が持つ機能を実現する工夫が求められています。例えば、アルプス電気は薄い携帯電話の側面に設置し、かつオートフォーカス機能実現のためのスイッチを開発しました。通常、スイッチは上から下方向に押しますが、側面にボタンを設ける場合は、内部の回路基板に対して水平に押す(力をかける)ことになります。幅のない側面で内部の回路基板に対して水平方向へ移動する“横押し”、かつ、オートフォーカス機能に合わせ、ピントを合わせる“半押し”とシャッターを切る“押し切り”を、わずか高さ・1.22mm、幅・4.0mm、奥行き・5.0mm、体積・24.4mm3の中で実現しているのです。

大きさは50円玉の穴くらい  SPEEシリーズ

大きさは50円玉の穴くらい  SPEEシリーズ

小さなものを正確にたくさん作る「金型技術」

アルプス電気は、こうしたスイッチを、年間60億個、1日で2000万個、作っています。新しいスイッチを生み出すことはアルプス電気の技術の核ですが、同じものを大量に作ることもアルプス電気の重要な技術のひとつです(※4)
同じものを大量に作るには「金型」が生命線となります。スイッチの多くは、プラスチックと金属でできています。こうした材料を求める形どおりに大量に生み出すために、主に「モールド金型」と「プレス金型」が必要になります。
モールド金型は、樹脂の成形を行います。モールド金型は、樹脂を型に流し込んでスイッチの部品を作ります。モールド成形は、金型の精度も重要ですが、金型に樹脂を送り込む圧力など、長年培ったノウハウが生かされています。プレス金型は、プレスすることで金属板を打ち抜いたり、折りを作ったりすることで、スイッチ部品を作り出します。
アルプス電気のスイッチは小さなもので一片が2mmほどのものもあります。小さなスイッチの部品は、そのスイッチよりも小さく、その小ささの中で正確さを求められます。更に、正確な形を打ちぬいたり、折り込んだりを一日2000万個のスイッチを作り出すスピードで行っているのです。

アルプス電気は、設計どおり機能する製品を大量に生産する技術の研究を続けています。現在、アルプス電気のプレス技術は、サブミクロンの精度を実現するに至っています。

【プレス技術:実現できる金型の精度】

「プレス技術:実現できる金型の精度」拡大画像

閉じる

※4)世界に誇る日本のブランド

私たちの身の周りのもので、金型を使わずに製造されているものはごくわずか。日本の製造業は、金型技術の発展に支えられてきたといえます。日本の金型技術は国際的にも高い評価を獲得。一般の人には見えにくいことですが、世界の最先端の「金型技術」が日本にあり、その技術が電子・電気機器、自動車、カメラなどの高い性能・機能を生み出しています。経済産業省ではこうした技術力をさらに発展させるため、「JAPANブランド育成支援事業プロジェクト」を開始。金型産業の支援・育成をバックアップしています。